Going my way

いいなと思ったことをメモしていきます。

「成金」それはホリエモンの成り上がりを追体験できるもの


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成金
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堀江 貴文
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ご存知「ホリエ本」。

本作は「拝金」に続くホリエモンの二作目の小説である。

文章自体はケータイ小説のように軽い。
話の展開も村上春樹のようにファンタスティックでもなく、
伊坂幸太郎のように張り巡らされた伏線が気持よく回収される訳でもない。

それでも、面白い。

それはなぜか。
堀江貴文という男の人生が魅力的だからだ。
文章は軽くても、堀江の人生が濃く重いからだ。
そして、実在する人物(それは容易に想像できる)とのやりとり。
フィクションの中の圧倒的なリアリティこそが、この小説の魅力だ。

人の人生を形容する言葉として、
「ジェットコースター」
という言葉がこれほど似合う男はいないだろう。

IT業界の寵児ともてはやされた2000年代前半。
それが一転し、2006年ライブドア事件での逮捕。
釈放されてからは、出版やブログ、メルマガを通じて活動を再開。
ひと月840円のメルマガの読者数は1万人を超えた。
東日本大震災時には50万人を超えるフォロワーに対し、行方不明者の情報をリツイートし、それによって救われた人も現れた。
そして2011年4月26日、2年の実刑判決が下された。

まさにジェットコースターではないか。
面白い。不謹慎かもしれないが、本当に面白い人だと思う。

この「成金」という小説の中には、堀江貴文からのメッセージが所々に散りばめられている。
小説の展開も所々現実とリンクしているが、ここでは堀江貴文からのメッセージを小説の中の言葉のままに紹介したい。

「金で動かされる人間はダメだ。価値のあるのは、ま、使える人間って言い換えてもいいけど、金でしか動かない本当のプロフェッショナルか、金では動かないアマチュアなんだよ」 

IT業界はスピードが全てだ。 
堀井は確信している。 
構想しているアイデアは間違いなく画期的だが、いま、この瞬間、まったく同じアイデアを持った人間が必ずどこかにいる。競争相手はインターネットで網羅された全世界なのだ。ライバルは見たことも聞いたこともないどこかの国の、小さな街角の、ぼろいガレージの中にいる。 

自由な意思がなければ、ITの世界を勝ち抜くのは不可能だ。 

「信じ切ることだ。僕たちならできる、その先には必ず未来が開かれている。絶対に世界で勝てる。僕たちが最も優れている」 

(パソコンを指して)この小さな箱には無限の世界が広がっている。 

起業は傍目にはかっこよく映るかもしれない。でもその資格は、死ぬほど寒い真冬の夜に、室外機のぬくもりを頼りに平然と寝る覚悟があるやつだけに与えられる。 

値段をつけられることではなく、値段をつける側になるほうが、ずいぶんましなことだし、もっと言えば、本当の価値とは誰からも値段をつけられないことだと、僕はそう思うけどね。 

国内のみならず、世界の主要なIT企業はぼろくて狭い空間(ガレージ)で産声を上げてきた。 
ビル・ゲイツのマイクロソフト、スティーブ・ジョブズのアップル。世界に冠絶するIT企業のトップたちはその風景を知っている。ほかならず彼ら自身がほんの数十年前にガレージで立ち上げたのだから。 
堀井は、それがITの可能性だと思っている。 

「すべてはガレージから----」 
このぼろい事務所こそがITの持つ可能性だった。夢そのものなのだ。 

この本は、堀江貴文が駆け上がって行く時の、当時の息吹を感じさせてくれる。
私達は、成功した後の彼しか知らないが、彼の雌伏の時期にこそ、彼の魅力が詰まっているのではないだろうか。
そして、稀代の起業家である堀江の雌伏の時期を追体験できる最も有効な方法は、この小説を読むことだったのだ。



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