ミクシィはなぜ終わってしまったのか
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facebookの勢いがすさまじい。完全にキャズムを超えたように見える。
キャズムとは、新しいものが市場に浸透するまでに、メインストリームへの移行を阻害する大きな溝のことである。
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/chasm.html
2ヶ月前にfacebook上の「友達」の数が「マイミク」数を上回った。
以来、差は広がるばかりだ。
mixiの更新自体も減った。ログイン自体も減った。
いつからmixiはこんなにもつまらなくなってしまったのだろうか。
2006年~2008年あたりのmixiの勢いはすごかった。
大学の図書館のPCルームでは2人に1人があの特徴的なオレンジ色の画面を開いていたし、
mixiが共通の話題にあがることも多かった。
今はfacebookやtwitterの話題が出ることこそあれ、mixiの話をすることはほとんどない。
ご飯を食べているときも大抵の女性は、
「これおいしい~『facebook』にアップしていい!?」
という。mixiではないのだ。
振り返るに、mixiが最も流行った(話題になった)のは2008年くらいで、mixiが最も面白かったのは2010年の1月くらいだったと思う。
この時期は「怪盗ロワイヤル」がmixi上で流行り、足跡も健在だった時期だ。
夢中になって足跡をチェックし、怪盗ロワイヤルで宝が盗まれていないか確認したものだ。
当時、iPhoneを持つ人は珍しがられ、ガラケーが主力だった。
この頃、スマホ黎明期である。
ここ2年でスマホユーザーは爆発的に増えた。
初めは一部のITに関心の強い層だけが使っていたスマホだったが、次第にどんな若者もこぞって使い始めた。
同時に、SNSとの関わり方も変わってきた。
スマホ普及に従い、「インターネットにアクセスする」ことは呼吸をすることのように自然なことになった。
東京の電車に乗るとわかるが、皆一様にスマホをいじっている。
暇なときは24時間、いつでもどこでも常にインターネットにつないでいる。
SNSとはつまり、24時間のうちの暇な時間の奪い合いなのだ。
mixiが明らかにつまらなくなったのは、スマホ対応のUIに変更してからだ。
見づらく、操作しづらいUIはmixiにアクセスする意欲を失わせた。
mixiにアクセスしなくなった時間をtwitterや2chまとめサイト、GREE、Mobageが奪っていった。
足跡機能がなくなって一層mixiにアクセスするインセンティブを失った。
あるウェブサイトのページが閲覧された回数やアクセス数のことをPV(Page View)というが、
PVを増やすには、mixiは足跡を廃止すべきではなかった。
どこかのサイトで見たグラフでは、最近になってもmixiのPVは減っていないようなグラフが書かれていたが、
みんなが"Webに"アクセスする時間が劇的に増えたから減っていないように見えるだけで、相対的にmixiに割く時間は減っているはずである。
ウェブ上の人間関係を良好に保ち、ユーザ間がつながりやすくするために足跡を廃止したようだ。
mixiの仮想からリアルへ向かっていきたいという意図を感じたのだが、
そこに登場したのがfacebookである。
facebookは日本人も顔出し、本名で登録している。そこで形成されるコミュニティは限りなくリアルに近い。
facebook自体が元々そういう理念で始まったのと、外国からきたものを素直に受け入れやすい日本人の性質も相まって、
web上のリアルな人間関係はfacebookを通じて築くようになった。
facebookは会員数が1000万を超えたという。驚異的なスピードで浸透している。
ハイテク業界において新製品・新技術を市場に浸透させていく際に見られる、初期市場からメインストリーム市場への移行を阻害する深い溝のことをキャズムというが、
さらには、mixiなどはやっていなかった層までも竜巻のように巻き込んで拡大を続けている。
こうなってしまうと、mixiの立場がない。
もっというと、mixiを使う意味がない。
こうして、mixiの更新回数はどんどん減っていった。今ではよっぽど暇なときでもmixiを見ることはまれだ。
僕の友達を見ても、mixiを更新するのは一部の人だけになっている。
言葉は悪いが、移行に出遅れた低学歴層が多い。
逆に、facebookへの移行は高学歴層から始まった。
facebookに投稿することに慣れた人はmixiに投稿しなくなり始めた。
SNSが『時間』という貴重で有限な資源を奪い合う以上、魅力のないプラットフォームにこの資源(=時間)が投下されることはない。
これからは、
「あのSNSもこのSNSも」ではなく、「あのSNSかこのSNSか」
でプラットフォームを選ぶ時代なのだ。最近はSNSの乱立が続いたが、人々の「選択と集中」は今後ますます加速していくだろう。
プラットフォームは一つで十分だからだ。
今後は新規のSNSの参入は難しいように思う。
僕は一度愛したものは愛し続けるタイプの人間だ。
僕は大学生の時にmixiに恋をして、それ以来mixiを愛し続けた。
改悪が続き、それが全く改善の兆しを見せないmixiに、悲しみにも似た怒りを覚えたが、それでも愛した。
裏切られても、mixiが一番だと信じていたからだ。
でももう今は、mixiに振り向きはしない。
facebookというもっと素敵な恋人ができてしまったから。
一度冷めた関係を修復させるのは、初めから関係を築き上げるより難しい。
僕と同じような感情をmixiに抱いている同年代は、日本中にいるはずである。